ビッグデータを活用した調剤情報共有システムを長崎県五島市で構築・運用するにあたり、幅広い支援を行うなど、情報通信による医療分野の高度化に多大な貢献をしたとして、長崎大学(河野茂学長)が総務省九州総合通信局及び九州電波協力会に表彰されました。この表彰は長崎大学の離島医療研究所、前田隆浩教授の取り組みが表彰されたものとなります。
詳しくはこちら↓
https://www.soumu.go.jp/soutsu/kyushu/press/190529-1-0_.html
課題先進地である離島・へき地の地域課題に向き合う
ビッグデータを活用した調剤情報共有システムを長崎県五島市で構築・運用するにあたり、幅広い支援を行うなど、情報通信による医療分野の高度化に多大な貢献をしたとして、長崎大学(河野茂学長)が総務省九州総合通信局及び九州電波協力会に表彰されました。この表彰は長崎大学の離島医療研究所、前田隆浩教授の取り組みが表彰されたものとなります。
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https://www.soumu.go.jp/soutsu/kyushu/press/190529-1-0_.html
パネルディスカッション 「島の課題解決とパートナーシップ」
【下川理事】(以下「下川」)
今回のシンポジウムの趣旨は、長崎大学と地域に実際にいる方との接点を作り、問題点を明確にすることです。フロアの方も含めてディスカッションをしていきたいと思います。
大学内での意見の中には、大学が地域の課題を解決しなければ大学の存在意義がないのではないか。そのためには、シンクタンクを大学内に作り、地域から問題提起があった際には学術的な助言が出来るようにしておく必要があるのでは、という声もあります。
大学の存在意義を考えた場合でも、SDGsと大学はリンクしているものであると認識しております。パネルディスカッションでは、地域の方から本質的な問題は何か、また大学に何を求めるかを伺います。
【五島市 地域おこし協力隊・濱本 様】(以下「五島・濱本」)
離島では、人口減少・高齢化の特徴があり、どの産業でも人手不足が課題に挙がります。
現在の私のミッションとして、ドローンを使った産業を構築することがあり、人手不足という課題に対してドローンを活用してアプローチしているところです。これは主に”高齢化”を意識した取組みです。
【五島市三井楽支所 地域おこし協力隊・宮本 様】(以下「五島・宮本」)
確かに、離島の人口は減少しています。五島市では直近4年間の間で若者が進学のために951人が島外転出しました。
若者の島外転出を押さえるため、若者が島に残るチャンスとして、大学のサテライト学部(分校)を五島に作ってもらいたいです。これは、人口流出対策となるだけではなく、家計の経済的な負担軽減と島の活性化にも直結すると考えます。さらには、今現在島にいる若者達が学び直す機会にもなります。
また、活動している中で、民間と行政の隙間を感じるので、民間と行政の間に学術的な立場の大学が介入することで、良い潤滑油になるのではと考えます。
【下川】
今現在の長崎大学と地域の関係はどのようなものですか?
【長崎大学地域医療協働センター・前田教授】(フロアからの意見)
医学教育においては、大学内だけの教育では偏りが出てくるため、地域医療教育が重要視されてきています。そのため、地域に頼らざるを得ないところです。
島で地域医療教育を行うメリットは、連携全体が見渡しやすい、かつ短期間で学習効果が見えやすいという点です。
さらには、地域医療教育だけではなく、地域そのものを知ることが医学教育では大事とされてきています。地域に住んで地域の内部を知る、ということが今後は必要となってきますので、離島住民の方にはその受入れ体制を整えてもらっています。
また、学生が地域住民に健康講話を行う等で地域住民とふれあう機会は作っています。
【長崎大学地域包括ケア教育センター・永田教授】(フロアからの意見)
学生を見ていると、地域医療教育前後で目の色が変わります。何よりの先生は地域の方々だと感じます。これをいかにして制度として構築していくかというのが我々の課題です。
【下川】
上五島の実状はいかがですか。
【新上五島町総合政策課政策推進班係長・伊賀 様】(以下「新上五島・伊賀」)
海洋未来イノベーション機構のニシハラ先生と学生と一緒に「なぜ良い藻場には海藻が生えるのか」という研究を行っています。そういった中で、漁師がどうやったら生活できるのか、若者がどうやったら漁師になるのかを学生と一緒に議論しています。
漁業と融合できる再生可能エネルギーをどう作るかのモデル事業も行っています。自立できる漁業と海洋再生可能エネルギーの融合を目指しているところです。
【下川】
住民としては、沖合養殖や風力発電などが産業としてどのくらい地域に貢献されるか具体的な数値等で知りたいと思うと思うのですが、具体的な将来像はどのようなものですか。
【長崎大学環東シナ海環境資源研究センター・征矢野教授】(フロアからの意見)
漁業と融合できる再生可能エネルギーについては、まさに始まったばかりのため、データが少なく、算出・シュミレーションが難しい状態です。
プロジェクトを促進するためには、大学が地域に基盤を確立することが一番良いと考えますが、水産・海洋工学分野の場合はハード面への投資が必要となります。大学だけでは投資をまかなうことは困難ですが、行政や民間と協力することで実現可能となると考えます。そうすると、島に合わせた実状が見えてきて算出ができるようになります。
【下川】
小値賀町での課題はありますか?
【小値賀町・イトウ様】(フロアからの意見)
水産関係で大学と連携しているときいていますが、それ以外での連携はあまりないようですので、どういったことが出来るかを検討するために本日は参加しました。
【下川】
壱岐市みらい創りサイトは先端を行っている印象があるのですが、産学官で活動を行っているのですか。
【壱岐市みらい創りサイト事務局長・篠原 様】(以下「壱岐・篠原」)
どちらかというと行政と民間企業だけで、大学との連携は弱いです。
【下川】
離島間での交流・連携はありますか。
【五島・濱本】
連携がとれていないのが実状です。大学に間に入ってもらって、連携が促進されればと思います。
【下川】
対馬の状況はいかがですか。
【対馬市しまづくり推進部しまの力創生課長・一宮 様】(以下「対馬・一宮」)
対馬市では、担当職員制度を導入し、職員を各地域に複数名配置しながら、今後地域をどうつくっていくかを考えています。地域毎に課題は出てきているのですが、自立出来る地域は自立してもらい、必要な場合にはサポートをしていく体制です。
しかし、行政としても限界がありますが、地域に学生が入ってくると、年配の方はそれだけで元気になります。
実例として、現在12の大学と連携をしていますが、年配の方が学生のために民泊を始めました。その後、交通網を確立しようとコミュニティバスを今度は学生と一緒に新しく開設しました。こうやって外部の新しい知恵・風が入ると地域として動き出すので、もっと大学に地域に関わって欲しいです。
大学との連携に関しては、行政が地域と大学の間に入ってコーディネートをしています。それぞれの研究テーマに応じて適当な地域を紹介しています。
全ての地域を平等に活性化していくことは難しいですが、まずはやる気がある地域を後押ししています。自立出来る地域を創っていきながら、自立が難しい地域を行政がサポートするようにしています。
【下川】
現在はコンパクトシティがトレンドのようですが、対馬はどのようは考えですか。
【対馬・一宮】
対馬の場合は、漁港・山村と地域が散らばっているので、都市型コンパクトシティの形成は難しいと考えます。しかし、地域包括連携という形で、小学校単位で連携が出来ています。
【下川】
離島間の連携はあまりないようですが、長崎県としては課題だと思いますが、いかがですか。
【長崎県企画振興部地域づくり推進課企画監・浦 様】(以下「長崎県・浦」)
このシンポジウムのキーワードは「連携」だと思います。地域間連携、産学官連携、都市部との連携。これらの連携を深めていくことが人口減少に歯止めをかけるのではないかと考えるので、連携作りにしっかりと力を入れていきたいと思います。
現状行っていることは、平成29年から地域商社を各島で立ち上げております。主に都市部の商談会で島の特産品の売り込みを行っています。それぞれの島に魅力があるので、それをまとめることで消費者へのアピールが効果的になります。今後もこういった形で地域間連携を促進していきたいと考えています。
【下川】
それぞれの島に特徴があるので、観光は即効性がある産業だと思いますが、どう思われますか。
【対馬・一宮】
対馬には韓国船観光客が昨年35万人来ました。これは、対馬の人口3万人と比べると約10倍の人数です。今年は40万人を超えると言われています。
地域内の経済維持としては、観光客が来ることはありがたいことですが、直接的に地元にお金を落としてもらう取組みが遅れています。お土産品や特産品など、観光より加工品へのアドバイスを頂けるとありがたいです。
【新上五島・伊賀】
以前、対馬の観光協会にいたときの経験では、近年、観光客数が底打ちだった56万人から2万人ずつくらい増えてきています。一般客に加えて、企業研修などで利用されています。観光連携については、壱岐・対馬・五島で福岡市を中心に離島プロジェクトを展開しています。
【五島市地域振興部長・塩川 様】(フロアからの意見)
こまでは観光客の“数”だけを見ていましたが、五島の観光の場合、自然を楽しむことがメインとなるので経済効果が薄いです。消費額をどうやって増やすかが課題となっています。
また、既存の観光資源に加えて、風力発電への視察が年間1,000人単位で増えてきています。その視察団に対して、長崎大学が学術的な知見も一緒に紹介出来れば視察の価値がさらに上がるのではと考えます。
【下川】
離島の場合、交通網を考えると産業・観光には不利な面もあるのではないでしょうか。
【長崎県・浦】
空路は、都市部からの観光客が増えていますが、現状の離島の空港の滑走路の長さでは対応出来できる飛行機が限られています。島からも空港の滑走路の長さを伸ばして欲しいという要望が県庁に来ています。
観光客の誘致だけではなく、産業の活性化・離島住民の利便性を考えるとインフラ整備はなくてはならないものなので、県としてしっかりと取組みをしていきたいです。
【下川】
企業の方からのご意見を伺いたいと思います。
【一般社団法人イノベーション長崎】(フロアからの意見)
2~3年後の構想として、仮想通貨の「ながさきコイン」の発行を考えています。規制・セキュリティ・税制の問題があるので、これらの動向を見ながら、実需とながさきコインの発行をどうするかを現在研究しています。
【アジア航測株式会社】(フロアからの意見)
弊社は、地図作成、建設関係のコンサルという形で行政・民間の社会インフラ整備のお手伝いをしています。
今回のシンポジウムでは、過去から現在に変わることがどう認められるか、さらに未来にどう向かっていくかという長崎の姿勢が見られ、長崎という印象が変わりました。
【離島経済新聞社】(フロアからの意見)
日本の有人離島の情報を扱っている会社です。
企業・法人からのよくある問い合わせとしては、地域に入っていきたいが窓口が分からない、地域のニーズが分からないといったものです。弊社は、丁寧に取材をし、情報を扱っているので、我々を上手に使って頂ければと思います。
【長崎大学地域医療協働センター・前田教授】(フロアからの意見)
大学が地域と連携する上で、大学が考慮・注意しなければいけない点や要望があれば教えてください。
【五島・宮本】
途切れないことが大事です。途切れずに地域に来てください。どんどん島の人を巻き込んで行って、島の人に当事者意識を芽生えさせることが出来れば、単なる「受入れ側」という意識もなくなると思います。
【対馬・一宮】
島に入って教育・研究・調査等を実施する際には、自治体にも詳細を教えてください。調査内容・人数を事前に教えて頂ければ、行政としてアドバイス・アレンジが出来ますし、トラブルが起こった際にも間に行政が入りやすいためです。
【壱岐・篠原】
もっと実践につながるようなレベルの高い取組みを継続的に行って頂きたいです。
【五島・濱本】
サテライトキャンパス(分校)だけでなく、オンラインなどでリモート学習ができる環境が出来れば良いです。離島の技術者はスキルを上げる機会がないので、島内で学習が出来る、しかも長崎大学がそれを提供してくれるというのはアドバンテージです。長崎大学のこの講座を修了したので、技術者として認められる、といったようになれば良いと考えます。
【下川】
長崎大学グローバル連携機構は、国際的な教育・研究活動を支援する部署です。この取組みを世界に発信して行くべく取り組んでいます。今後も島嶼SDGsとして、島・県と組織を作って、全体として推進していきます。
島×イノベーション~健康の創生~
永田 康浩 地域包括ケア教育センター長
2004年から長崎大学は学生を育てるべく離島での地域医療教育を始めました。当初は離島を中心におこなっていたのが県内全域に広がり、最終的には都市型教育にも結びつくようになりました。また、医学部生の県内就職率も2013年49.5%から2017年62.6%に上がりました。
教育の他にも離島医療のイノベーションも行ってきました。検診は基本的な項目に加えて生活習慣病・予防に特化した項目を加え、検診体制を整えました。また、五島市の全調剤薬局をICTでつなぎ情報を一括化することで、疾病予防の活用にも繋げました。検診データ等を解析するだけではなく、介入研究を行い、アクティブリサーチを実施しています。その離島コホート研究から生まれた結果として、舌圧は高齢者の家族構成・社会活動・社交性と関連することが分かり、虚弱予防として健康の創生ができないか模索しています。これからは、住民の要望に応じた教育を行い、医療人を輩出することが離島の持続可能な発展につながると考えます。
海洋再生可能エネルギーと島の水産業との共生
征矢野 清 海洋未来イノベーション機構 教授
長崎県は水産県であり、今後は育てる漁業の拡大を目指すべきです。養殖魚の国内における販売には限界がありますが、海外マーケットは多いに期待できます。
しかし、現在の養殖形態では海外ニーズに対応していないため、新しい養殖形態の確立が必要です。そのためには、①完全養殖であること、②衛生的で綺麗な環境で飼育された魚であること、③環境を守りながら飼育された魚であること、④安定した品質・サイズの魚を供給できることの条件があげられ、これらを満たすために沖合養殖が注目されています。
沖合養殖の将来像として、海洋再生可能エネルギーフィールドを養殖フィールドにも活用し、エネルギーと共生させIoTを導入したハイブリット養殖形態を目指しています。
長崎の離島には既に国が指定している再生可能エネルギーフィールドがあり、それらを活用したハイブリッド養殖が出来やすい環境にあり、かつ漁業の基盤がしっかりある地域です。今後は、島を舞台とした新たな海洋産業の創出が必要となります。
Industry 4.0を駆使したスマート6次産業化モデル構築事業
篠原 一生 壱岐みらい創りサイト事務局長
壱岐市は、平成30年に内閣府の事業であるSDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業に選ばれました。そのため、未来都市として「壱岐活き対話型社会“壱岐(粋)なSociety 5.0”」を実施します。Society 5.0とは、先端技術を駆使して経済発展と社会的解決を両立させる新たな社会構造のことです。
2030年の壱岐市は、先端技術を積極的に取り入れることで少子高齢化等の社会的課題の解決と経済発展を両立させ、更には外部の人や情報とつながることで技術革新が継続する一人一人が快適で活躍できるしなやかな社会となっていることでしょう。
その将来像を実現すべく2018年からの3年計画でSDGs達成を加速させるモデル事業を実施します。生産から販売まで各工程で先端技術を取り込み、労働力減・収益増を目指します。それらは、経済の取組みだけで終わらず、社会や環境の取組みの一環として実施します。
五島市における人口減少対策の取組み
塩川 徳也 五島市地域振興部長
五島は、自然・食べ物・歴史など様々な魅力が詰まった島です。しかし、60年前の9万人から現在では3万7千人の人口に減っています。2060年に2万人の人口を保つことが行政目標ですが、現在は極端に20~30代の人口が少ない状態であり、若者が戻ってきたくなる五島をどう作るかが課題です。
【観光】世界遺産の教会群や修学旅行の誘致、スポーツ大会の開催等の効果もあり平成25年度から増加傾向にあります。今年度の観光客は23万人に届く勢いです。
【移住】五島市は県内の自治体では一番移住者数が多く、特に30代までの移住者が7割と若い世代が目立っており、更に3年後の定着率も8割と比較的高い水準です。しかし、住居が足りないという課題があります。
【仕事】地域にある資源の活用に加え、風力発電やドローンなど先端技術を活用した事業を行うことにより2年間で280名の雇用を創生しました。
【集落支援】住民主体の集落支援を行うため、まちづくり協議会を13の公民館単位に設置し、それぞれの活動に対して、五島市から交付金を分配しています。今後は、イベント(行事)を事業へと展開することを目指しています。
日本の集落の在り方
安武 敦子 工学部 教授
現在、交通とサービスが効率化されコンパクト化された集落が目指されています。しかし、島という国土を守るためには人が住み続けられるよう薄く広く集落を形成することが良いと考えます。それは、人が住み続けることで環境が保たれるということでもあります。
人が住み続けるには、定住のしやすさ、交流人口の拡大、産業の確立が上げられ、これらによって若者を呼び込むことにもつながります。
新潟での取組みの一例として、集落と都市を繋げるために、まずは自宅の庭の花や野菜を公開するオープンガーデンを実施しました。最初は少人数でしたが集落中、集落外の中学生らへも参加の輪が広がり、それに続いて自宅での写真展の開催やインターンの受入れ等、様々な形で集落を開き、それが結果的に住民の生きがいにつながり集落が活気づいたところがあります。
長崎の離島における課題としては、広く薄く暮らすモデル構築、集落の価値の認識、住居(受入れスペース)の確保等が上げられます。しかし、広く薄く暮らすために最も重要なことは外部(第三者)と関わりを持ち、集落のサポーターを増やし、色々な人が集落に関わっていくことだと考えています。
経済活動を支える為の道路インフラ~島の道をいかに守っていくか~
松田 浩 インフラ長寿化センター長
日本のインフラの状況は、2007年の国土交通省の調査では、当時8割の地方自治体は橋梁点検を行っておりませんでした。その後、2012年笹子トンネル天井板落下事故を契機に内閣府でインフラ長寿命化基本計画が策定されました。しかし、道路橋全体の68%は地方自治体が管理しており、その維持管理をどのように地方で行うかが課題でした。
長崎では、効果的な検査法の確立・人材不足・予算不足・離島が多い・文化遺産の保全・自然災害への対処等が課題でした。そのため、こまめに保全することでコストを抑え、地域でメンテナンスできる「予防保全型メンテナンス」の手法を取り、それを支えるための”通守”の養成を産学官連携で10年来実施してきました。道路全体の維持管理ができ、高度な技術開発が出来る人材を”道守”に認定し、離島も含めた県内全域にくまなく配置しています。今後は先端技術を活用し、少人数での維持管理を可能にしたいと思います。
離島教育の課題と地域教育総合支援センターの取組み
中村 典生 地域教育総合支援センター長
長崎の離島教育の課題として、まず小規模校の多さが上げられます。12学級未満の学校は小規模校に分類されますが、長崎における小規模校の割合は70%で全国8位の多さです。また、複式学級の割合も5.62%と全国5位となります。陸続きではない島にある学校同士の合併が難しいため、長崎は小規模校等の割合が高くなっています。
長崎大学教育学部では、複式学級での実習や離島での実習を推奨しています。
また、五島と松浦にサテライトオフィスを設置し、セミナーの実施、出張オープンキャンパス、理科の移動実験体験(今年度は離島5箇所で実施)を行っています。
更に、自分の町にどのくらい誇りを持てるかは教育上大事であると考え、ふるさと意識の向上のため、佐渡市の小学校とIoTを活用して共同授業の実施も行いました。
離島教育の課題として、①小規模校の数、②情報の格差、③他地域との比較によるふるさと意識の向上、が上げられますが、これらを解消するため長崎大学が窓口となり地域と連携しながら、今後の日本・世界の課題解決につながればと思います。
島の医療と課題とこれまでの取組み
前田 隆浩 地域医療協働センター長
長崎県には51の有人離島があり全国一の数です。しかし、離島人口を見ると長崎県は鹿児島県に次いで2番目であり、近い将来3番目となることは確実と言えるほど長崎の離島人口の減少は激しく、最近の12年間で3万人近い人口が減っています。特に高齢化は深刻で、平成29年の全国の平均高齢化率が27.7%であるのに対し、平戸市39.2%、壱岐市36.9%、対馬市35.8%、小値賀町47.1%、新上五島町39.7%、五島市38.8%と離島の高齢化率は非常に高くなっています。
医療の現場においては、離島における慢性的な医師・看護師不足は深刻化してきていますが、32ヶ所におよぶ公設出張診療所の設置等によって長崎県内の無医地区数はゼロとなっています。また、病院間の連携や救急ヘリ搬送等の工夫で離島への医療提供が保たれています。長崎大学医学部では、離島に教授らが常駐し、教育・研究・診療支援を行っており、学生らは実践的な地域医療を学ぶためにとして離島で実習を行っています。
今後は、離島の特性を活かした教育・研究を推進し、教育・研究を切り口にして、専門医の誘致を図っていきたいと考えています。
島とSDGs~本シンポジウムの趣旨
藤野 忠敬 グローバル連携機構 准教授
SDGsは全世界に向けたコンセプトであり、「誰一人取り残さない、社会・環境・経済三位一体の課題解決」がキーワードとなっています。
国連は、市民社会と民間が国連と動くことでしか達成がなし得ないSDGsの目標を掲げ、”Whole-of-Government” approachでSDGsの達成を目指しています。
情報が共有され、国を超えて人々が簡単につながることが出来る今だからこそ、社会・環境・経済のバランスを取りながらSDGsの達成に向かえるのではないでしょうか。
長崎大学は離島において医療・教育・インフラ・まちづくり・スマートアグリカルチャー等の取り組みを行っていますが、これらに自治体からの要請を取り込み、具体的な取り組みから連携を取ることで、SDGsの目標を達成します。
世界遺産などの”過去”のものだけが認められる長崎ではなく、”今”の長崎も世界に認められるよう、長崎から世界の未来の処方箋を提供しましょう。
挨拶
廣田 善美 長崎県企画振興部政策監/離島・半島・過疎対策担当
長崎県は、島の数日本一、有人島数日本一、離島振興法指定島数日本一、さらには県道の4割が離島にあるという、まさに「日本一の離島県」です。島は長崎の特徴であるにも関わらず、特に離島における人口減は著しいものであり、県としても離島における人口減・高齢化は重要課題の一つとして認識しています。
そして現在、有人国境離島法という国の支援制度を最大限に活用して、島の特色を活かしながら、島の再生に取り組んでいます。
取り組みの一例として、豊かな海洋資源を活かした再生可能エネルギー関連、養殖の増産整備、特産品の品質・生産性の向上などがあり、これらには、島内の人のみならず、島外(Iターン)の人たちの力もあります。その結果、昨年度は340名の新たな雇用が生まれ、そのうちの80名が島外からの転入者でした。
「住民が島に住み続けられる環境」を整える取り組みに長崎大学の力が加わることを大いに期待しています。
開会挨拶
河野 茂 長崎大学長
国連が掲げた「持続可能な開発目標(SDGs)」の17の目標を我々はどのように実現するべきでしょうか。急速な人口減少・高齢化に直面している我々、長崎県民にとっては、特に目標11「住み続けられるまちづくりを」は非常に重い課題と言えることでしょう。
取り分け離島においては、人口減少・高齢化の対策が迫られており、既に日本の平均の10年、20年先を表しているような地域となっています。
地方の国立大学として、このような問題にどういった技術・イノベーションで対応するか、どのように行政・市民との連携を図るかを考え、実行する必要があります。
長崎は、徳川時代唯一、外に開けた地域でありました。これからもグローバルに解決策を提示出来るよう、本学の理念である「ヒトの幸福と平和を希求し、科学を用いて世界に資する研究の推進」を軸に地域の皆様と一緒にSDGsの達成を目指します。